2009年 04月 21日
文化の割れ目 〜 その28 〜 |
孤独のグルメ。
素敵なタイトルである。
この漫画は僕の寝漫画の1つである。
激烈なるストーリー展開があるわけでもない、この書物。
主人公は井之頭五郎氏。
この男が、とにかく喰いまくるのだ。
気持ちが良いくらいに。
この本を、グルメ漫画とあなどるなかれ。
これは、ロマンの漫画なのである。
独りで輸入雑貨の卸業を営む、井之頭。
仕事柄、様々な土地に商品の納品をする氏。
その帰り道すがら、ぶらりと立ち寄る、
地元ならではの、いわゆる「メシ屋」。
そのメシ屋をかわきりに、シュウマイ弁当や、ハンバーグ・ランチ、
豚肉炒めライス、果てにはコンビニのお惣菜を買い込んで、
夜中のデスクでコンビニ食品祭りまで催す始末。
このように、登場する料理たちには
これといって特筆性は全くないものばかりである。
「グルメ」と言いはばかるには、なんとも
お粗末なものばかりである。
しかしながら、やはり駆り立てられるのだ。
詠まずには、そして喰わずにはいられないのだ。
曰く、「B級グルメ本でしょ、コレ。」
ふむ。
そういわれれば、そうなのかもしれないが、
それだけでは片付けられない気がしていた。
何故、この漫画に魅かれるのかを自己分析してみた。
僕らを始め、全人類が思う事。
それは、何かを口に入れる機会があるとしたら、
絶対的に美味しい方が良い。
特にお金を払っているとしたら殊更である。
そう、そりゃ美味しいモノを食べたいさ。
それが人情というものだ。
しかし、僕はこの漫画には、もっとプリミティヴなモノを感じるのです。
「美味しいもの」という食文化以前に「食」というのは、
元来、人類が生き長らえる為の術であった。
そう、今の様にオシャレで楽しむものではなかったのだ。
否、なかったはず。
僕はこの「孤独のグルメ」に、かつてあった人間の野性味を感じるのだ。
素敵なカフェやレストランも良いのですが、
僕はこういう食文化と呼ぶには、あまりにも無自覚な
人間と食事の連鎖を想わす、無装飾で無骨な食事を無性に摂取したくなるのである。
この「孤独のグルメ」を呼んだ後には、特に。
by green-ball
| 2009-04-21 02:07
| 本