2010年 07月 01日
文化の割れ目 〜その58〜 |
映画・息もできない について。
最近映画館で観た中で、群を抜いて一番だった。
感動というには痛々しく、面白いというには生々しく、
悲しいというよりは、もっとその先を見据えた何かを感じさせる映画だった。
韓国映画である。
僕はストーリーもさることながら、
監督・主演・脚本・製作・編集すべてを自分でおこなった
ヤン・イクチュンの凄まじい狂気と情熱と衝動と知性に
ほとほと感服してしまった。
というより、圧倒されてしまった。
ヤン・イクチュン監督は、この映画を製作するにあたって
全ての私財を投げうって作ったという。
この、撮らずにはいられなかった、という氏のプロセスにも
共鳴を強く抱く。
低予算でも、伝えたいことが明確であれば、
それはかならず伝わり、人の胸を打つ、ということを
あらためて思った。
ただひたすらに写実主義的描写、
寄りで描き説得力のある暴力シーンなど、
多彩なカメラワークがなくとも
ひとつの工夫やアングルのセンスだけで
魅せることができるのである。
ちなみに韓国でのタイトルは「糞バエ」。
ウンコ蠅みたいな人間たちのことだそうだ。
ウンコの蠅みたいにしか生きられないような人たちもいるという
韓国社会への痛切なメッセージにも感じ取れる。
エンターテイメント性は全くないと思いますが、
とにかく魂が震える映画。
暴力を表現に用いた術、作用を余すことなく理解した
ヤン氏の眼差しは実に鋭い。
これはまさに必見の映画である。
最後にこれだけは付け加えておこう。
見終わった後、
「シバラマー。」と無駄に言いたくなること必至。
by green-ball
| 2010-07-01 15:35
| 映画