2010年 07月 14日
文化の割れ目 〜その61〜 |
下妻物語、嫌われ松子の一生、でお馴染みの、中島哲也監督の話題作「告白」を観た。
率直な個人的感想を言えば、正直あまり好みではない。
が、しかし、超スーパーハイクオリティな日本映画であって、
必見の映画であることは間違いない。
中島監督の必殺技であるCGワークスは、まさに一点突破集中攻撃であり、
全編で駆使されていることはない。
あくまで役者陣たちの演技のみで構成されている、
同監督にしてみれば、かなり冒険的な演出である。
とにかく、松たか子さんが凄かった。
その美貌に凄みも相まり、
まさに、一世一代の大芝居である。
松さん演じる中学教師が、担任を受け持つクラスのHRで
ある衝撃的な「告白」をする。
この告白がきっかけで、あらゆる波紋と混沌を
同クラス内で繰り広げられることと成る。
開始早々、松さんのただ事ではない演技に引き込まれる。
背中を氷のハンマーで叩かれ、脊髄を麻痺させられるような冷たい衝撃を
オーディエンスは味わうことと成る。
もとより松さんの底力を日本最高ランクと認識していた
僕ではあるが、まさかここまでとは。
松さんには及ばずとも、共演でモンスターペアレントの役で木村佳乃さんもそれに迫る
ド迫力演技を魅せている。
中島監督の徹底した冷酷な演出も相乗で
現実離れした学級崩壊も、変な嘘くささがない。
しかし、致し方ないことではあるのだが、
やはりこの2大傑物があまりにも凄すぎて、
子役たちの演技が、力不足。
そこが残念だった。
レディオヘッドやクラシック曲の効果も素晴らしい。
「告白」は善良な母親であり教師だった女性が、復讐をするストーリーである。
そこいらにはびこくありがちな偽善的態度はない。
大切な者を奪われた被害者が、どれほどの悲しみと怒りに
見舞われるか、人の心の痛みの本質を鋭利に描いた正直さがある。
この作品から受ける、ドス黒い爽快感は、
偽善を真っ向否定していることからくるものだ。
ロングヒットで、とても良い興行成績を残しているというのも納得である。
by green-ball
| 2010-07-14 18:25
| 映画