文化の割れ目 ~その75~ |

全ての健やかなる男子男児よ!
兎に角、とにかく、武田鉄矢だ。
テッちゃんだ!!
これが、本当の「宮本から君へ」だ!
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」だ!!
若い方々はご存知だろうか。
名前くらいは聞いたことがあるだろうか。
この伝説のドラマの名を。
脚本は希代のヒットメイカー、野島伸司さん。
監督は山田太一先生の娘、宮本理江子さん。
建設会社の冴えない万年係長・星野達郎42歳。
彼は一度結婚式当日に花嫁に逃げられ、それから数えて見合いは99回。
そう、99回フラレているのだ。
今時分ではお見合いというものも中々珍しい事柄かもしれないが
我々の父母、叔父叔母までの世代は割と当たり前に在った行事の様。
片や、もうひとりの主人公、矢吹薫。
オーケストラ楽団に所属し、チェロ奏者として光っている。
容姿も端麗で、街行く誰もが目で追いかける様な絶世の美女。
この両極端のふたりがお見合いで出会う。
そもそも、薫には3年前、結婚式当日に婚約者を事故で亡くしている。
彼女はそれをいまでも忘れられないで、新しい恋をする気持ちになれない。
親からの斡旋もあり、顔を立てる意味で仕方なく「お断り」を前提で
お見合いをすることに。
そして薫との相手が、星野達郎なのである。
美女と野獣よろしく、チェロ奏者で美女、
かたや建設会社の係長で世辞にも美男とはかけ離れてた
出で立ちの小男の激烈なる奮闘記なのである。
達郎の薫への気持ちや熱情は気持ち悪くなるくらい純で大きい。
まるで燃焼する炎の如く、なのである。
ソレが心に在る限り、達郎に立ちはだかる高い壁も
降り注がれる困難の雨も、彼は屈しないのである。
薫を思うあまり、ナイスなエピソードは数知れず。
ボーナス80万円を全部突っ込んだり、薫の実家まで迎えにきたり、
薫は実は今、妊娠していると嘘を吹き込まれた際は
彼女の今後を思い、資金作りの為、深夜の工事現場で働いたり、
薫に褒められたいが為に上司のセクハラを撃退し、昇進を棒に振ったり......。
兎に角、健気で強固なのだ。
このドラマでやはり白眉なのは
達郎がトラックの前に飛び出し、
熱くプロポーズをするシーンだ。
序盤は「しつこい変質者」と称されていたのだが
いつのまにか彼の誠実で真摯な姿に
亡くなった婚約者が忘れられず、心を閉ざしたままの
浮沈空母・矢吹薫は扉を開いていったのだった。
達郎自身も、薫への愛を通し、変わってゆくのだ。
僕自身、恋愛ドラマは得意ではないのだが、
この作品は心の1本です。
見て損はなし。
ちなみにその翌年から始まる、これまた名作「一つ屋根の下」のあんちゃんを臭わす
江口洋介演じる、達郎の弟・順平も最高。
アニキ想いで、彼の幸せ、恋の成就を心から願い、サポートしてゆく兄弟愛は涙。
しかし、涙だけでは終わらせず、見せ場として
武田鉄矢演じる兄・達郎とのコミカルな掛け合いも見所のひとつ。
とにかく、マストで観てくだされ☆
いまならDVD、VHSより、フジテレビオンデマンドで
鑑賞してもらうのが宜しいかと思います。