2011年 03月 10日
文化の割れ目 ~その76~ |
最近、日本の至宝、bloodthirsty butchersを追ったドキュメンタリー映画「kokorono」を観て以来、
ずっと僕のヘッドフォンの中で鳴り響いている音楽はbloodthirsty butchersの轟音だ。
最近自分で購入するレコードはハードコアパンクかラテン、スカ、カリプソ、ダブステップ、ジャズと
あまり「ROCK」の文字は傍らには、居なかった。
しかしどうだったか。
この映画のおかげで僕は轟音にドップリなう。
先日、妻を連れ立って東京は吉祥寺の映画館に出掛け、この映画をレイトショーで観た。
2時間キッチリのこの映画。
あまりにも凄すぎて、言葉もなく、つい我を顧みた。
帰り道と言えば、放心状態。
この映画は「バンド」という生命体を通して
誰の人生にも降り立つ時期を露にしている。
被写体に成っているbloodthirsty butchersは1987年、北海道留萌工業高等学校の同級生である吉村秀樹と射守矢雄、
北海道留萌高等学校出身で1期下の佐野紀代己により前身のバンド「畜生」を結成。
この3人に加え上原子友康(怒髪天)が在籍していた。
1989年、佐野が脱退し、入れ替わる形で後輩の小松正宏が加入。
2003年に田渕ひさ子(toddle・元ナンバーガール)が加入し四人編成となる。
国内外の評価が高く、そのオリジナリティ溢れる詞世界、サウンドは他の追随を許さない孤高のバンドである。
1990年に1st アルバムから2010年「NO ALBUM(無題)」まで12タイトルをリリースしている。
そのキャリアの中で特筆すべきは96年作、BIG MUFFがドデカく印字されたジャケットの「kokorono」。
当映画のタイトルもそこから来ている。
まぎれもなく、永遠に色褪せない日本のロック史に残る名盤である。
世界レベルのサウンドに、日本独特の情緒を乗せ、どこにもないオリジナルを確率。
ボーカルの吉村秀樹さんは決して巧い歌手ではないのだが
彼にしか出せない歌心が確実にあるのである。
自分の言葉、自分だけの声、そしてメロディ。
またそのギタープレイ。
元々3ピースとは思えないほどの音作りがbutchersの特徴なのだが(現・4ピース)
吉村さんのひとりオーケストラ振りが、尋常ではないのだ。
ちなみに、私が愛するbutchersの楽曲2曲、添付致そう。
そんな彼らは結成20年も過ぎ、過渡期を迎えている。
音楽=バンドを続けるサバイヴ、好きなことだけをやりつづける難しさ。
誰にも魂を売り渡さず、独自の道を歩む姿勢。
音楽を宿し、生きてゆくという吉村さんの生への怨念が宿った映画なのである。
そして、「生きる」と、高らかではないが
背中にない交ぜて語っているのである。
それが渋い。
蝦夷の男たちと博多女の生き様よ。
是非、福岡で上映の際は劇場で爆音轟音に包まれてくださいませ。
by green-ball
| 2011-03-10 23:55
| 映画