文化の割れ目 ~その98~ |

9月も終わり、人々の装いも変わる頃の秋口。
秋の入りはいつも不意で、徐々に変わってゆく、なんてのを行わない。
急に様変わりを告げるのだ。
男はジャケットを羽織り、勤め先へ通う。
男に取ってここは戦場。(もちろん、女子にとってもね。)
仕事は愉しいものでありたいが、そうはいかない時もある。
大多数においては、なかなか辛いものであったりするのであろう。
多くの人はそこで数多の人生の悲哀を請け負う。
そんな帰り道、まっすぐ家に帰りたくない夜もある。
ひととき、仕事を忘れ、家庭を忘れたい、そんな夜。
男は止まり木を探す。
羽を休める。
精気を養う。
で、また日常という名の戦場へ出掛けてゆく。
ああ、人生。
30歳も過ぎると、チェーン店の居酒屋では気持ちが治まらなくなる時って、ありませんか?
少しばかり、自分しか知らない行きつけの呑み屋でひとりしょっぽりと酒を運び、
コの字型のカウンターに腰を落ち着かせ、一期一会の者同士で適当な会話に束の間の花を咲かせる.....。
「深夜食堂」という漫画と連続ドラマがある。
ドラマはシリーズ2作目を昨年終え、DVDにもなっており、
コミックスはこれまでに9巻まで出版されているので
ご存知の方も多い事でしょう。
とても有名なシリーズなので、内容にアレコレ言うのは、
ほら、百聞は一見に、とは良く言うモノで、
今回は内容に沿う、というよりは、
雑感を連ねたい気持ち。
僕はこのシリーズがたまらなく好きで、大袈裟に言う訳ではないが、
ある種の精神安定剤的要素もはらんでいる。
僕のグッと来る瞬間がある物語って、いつも決まって劇的なドラマがあるわけではない。
こういう日常的に紡がれた時間を描写するちょっとした出来事、そっちの方にグッと来るのだ。
夜の12時から朝の7時まで営業時間の食堂。
僕もちょいちょい顔を出す、新宿ゴールデン街が舞台。
食堂のメニューは豚汁定食が定番で、
赤いタコウィンナー、ネコマンマ、煮こごり定食、卵焼き、バターライス、
お茶漬け、明太子、カツ丼、焼きそば目玉焼きのせ、ラーメン、からあげ.....といった
いわゆるB級グルメのオンパレード。
そうそう。
こういうのでいいんです。
こういうのがいいんです。
特に真夜中に口にするモノたちは。
夜更け過ぎに食べてしまうあの罪悪感は、実に愉しく、
お腹だけではなく、心も満たしてくれるのです。
これはもちろんお話の中で登場するお店なので、実在していないことは言うまでもない。
しかしファンとしてはこの深夜食堂に近いお店を探してしまう、というのはこれまた人情。
福岡にも、こういうお店は存在するのだろうか?
中洲のケンズキッチンさん?
大名の柴村食堂さん??
もしくは屋台のラーメン屋さんがそういう存在なのだろうか。
この漫画や番組を観て、町中をディグった人は僕だけではないはず。
ああ、もはやこういうお店を僕がやっちゃおうかな!
人生交差点!
なんて思いにも駆られちゃいます。
この深夜食堂を皆さんにも観て頂き、
自分だけのone and onlyの夜の楽しみ方ができるお店探し、
止まり木を見つけてみてください。