2012年 10月 11日
文化の割れ目 ~その100~ |
秋はとても短い季節なのではあるのだが、
それこそ「芸術の秋」ということもあり、
なにかしらそういう類いのものに触れるには
もってこいの期間であることには間違いないのであるからして、
やはり何をするにも丁度良い温度の時期という事もあるのであろうか。
魂の揺らぎを覚えた山下達郎を日本から携えたとすれば、
今年の秋は、まさにflying Lotusと言えるのではないだろうか。
(↑ 完全に超個人的だが)
先日発売されたFlying Lotus(以下・F.L)の新譜を......、あっ、
その前にF.Lとはなんぞやとゆーことをまず触らないとわかりずらいですよね.....。
もう100回目の講釈となるのに、あきまへんなあ。。
そう!ダラダラと途切れては始まりまた途切れては再開し、で
100回目なんです!!
わーわー!ぱちぱちぱち!
では気を取り直し。
F.Lの作品はすべてが事件なのだ。
JAZZ界の巨人ジョン・コルトレーンを叔父に持つ彼は、
宇宙的感覚や究極の自己内省を求めるリスナーにとって、
それらはパズルを埋める新たなピースであり、またその他の一般的なリスナーに
とってはとにかく壮大で圧倒的な存在となりながら波紋を広げてきた。
最先端に置いて、もはや誰もが認める中心人物として君臨するF.L。
その作品群は、ジャズやソウル、エレクトリック・ミュージックにおける
過去の偉大な巨匠たちが抱いた野心やヴィジョンを共有し、
それでいて、誰も見たことがない圧倒的な未来を描いている。
僕は初め、WARPレーベルからの新人でHIPHOP?という勝手なイメージ先行で
F.Lを思い描いていたのだが、スピンしてみるとアレ?と予期せぬ結果に。
そりゃWARPだもんな、という合点がいくのと同時に
まるで右脳と中枢神経を切り刻まれる様な、そういう刺激的な鋭利さと、
そしてこれまでにないアブストラクトの響きとぬくもりを感じたのだった。
圧倒的な音のみじん切り/コラージュと無機なものなのに、だ。
そっから僕は、若干20歳前半の若者の作り出す万華鏡の様なサウンドスケープに
ずぶずぶと浸食していったのであった。
前作Cosmogramma』は、彼が住む宇宙を描いた作品と言っていいでしょう。
シンセサイザーは常軌を逸したソウル・セッションを奏で、
ドープなフリー・ジャズ遊牧民たちによって創られた大きなうねりは
壮大なオーケストレーションへと見事に昇華されている。
そして先日リリースされた新譜『Until the Quiet Comes』。
本人曰く「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」として
創作された本作は、“夜行性の情緒を携えた向こう側の世界への旅”という妙を纏っている。
点滅しながら徐々に意識が遠のき、潜在意識の世界へ。
焦点の合わない不可思議な感覚が訪れると、未知なる旅が始まる。
今作品全編を通してサウンドには緊張感が漂い、相互に作用するメロディとリズムが優雅な展開を描き出す。
まるで彼のDNAに刻まれているアート・フォームを丹念に抽出したかの様。
それらはかつてジャズやソウルの巨匠たちが、愛する人のために書いた楽曲に、美しく思慮深いテーマを隠し、
多くの人々を魅了してきたのと同じだ。
『Until the Quiet Comes』は伝統的な音楽理論に基づいた作品でありながら、
まったく新しい方法論を提案している。それこそが傑作の証なのだ。
ひやりとした秋の空気に、彼の音像の調和がとにかく美しい。
この秋、マストでお勧め致します。
by green-ball
| 2012-10-11 19:36
| 音楽