2009年 11月 02日
文化の割れ目 〜その54〜 |
誤解を恐れずに言うなら、僕はいわゆる様式美的な「ロック」が苦手である。
皮パン、革ジャン、サングラス、暴力、バイク、リーゼント、タンクトップ......。
アホか、と。
そんなふうに思っていた。
今日紹介するのは、いわゆるそういう日本の「ロック」を牽引してきたと思われるバンド、
BLANKEY JET CITYのボーカル&ギターだった浅井健一さんが1996年に
ソロ プロジェクトとして発表した「SHERBET」名義の”セキララ”という
素敵なタイトルの銀盤。
それまではB.J.C.という振り切った存在感&表現方法だった
浅井さんの裏側、乃至は、より内側/内面に持つカラーを
打ち出した、素晴らしい作品です。
コアなファンはさておき、一般的な層からの視線で言えば、
B.J.C.での音楽は繊細な部分も勿論兼ね合わされているんだけれども、
特筆されたり、クローズアップされるトコロはやはりそのトッポさだったり、
ワイルド性であったと思う。
イメージとは実に、時に便利で、時に足かせに成ってしまったりもする。
しかしながら僕は当時、その彼らのイメージを一発で覆されてしまった。
この宝物の様なアルバムのお陰である。
この銀盤が発売されたのは、秋口であったであろう。
凍てつくような、アコースティック・アンサンブルに、
浅井氏のハイトーンからロートーンまで幅広い
雰囲気のあるボーカリゼーション。
室内楽のような囁くピアノ。
オンボロ車のエンジンの様なプリミティヴなパーカス。
暖炉の炎が如く暖かく包み込むヴァイオリン。
その全てがシンプル/リリカルで美しいのだ。
まるで、これからやってくる、人々の冬期の営みの無常感や
雪の結晶を、表現の極みで形作ると、こうなるのである。
これを名盤と言わずに、どれを言おう。
いまから13年前にドロップされた、この作品を、
今一度、この冬に是非とも聴いて頂きたい。
できれば、ひとりで。
または何人かで。
美しさって、なんだろうね?
それは、SHERBET 「セキララ」である。
by green-ball
| 2009-11-02 20:51
| 音楽